昨年は6月後半から7月にかけての曇天多雨から一転して記録的な猛暑に見舞われ、大半の産地が生産に苦慮された年でありましたが、不断の努力により最小限の被害に止められましたことに心から敬意を表します。

価格面においても、産地廃棄につながる様な暴落がなく、近年続いた構造的な価格低迷期から脱したのではと予感させる年でもありました。一昨年から導入されたポジティブリスト制度も現時点では、安易な農産物の輸入を抑制し、国内農産物の価格形成に有利に働いているものと考えられます。

ただし、この制度も土壌残留期間の長い農薬の予期せぬ検出を中心として、生産・流通現場に多くの課題を提起しております。暫定基準や一律基準の設定の根拠や健康被害への影響について更なる検討がなされ、消費者も生産者も理解と納得のいく制度として確立されていくよう、行政サイドにも要請をしていかなければならないと思っております。

食品の偽装問題が一気に顕在化したのもこの年でした。食肉からお菓子まで原材料や消費期限の改ざんがなされ、食品に対する消費者の信頼を大きく裏切ったことは誠に残念でなりません。

消費者利益や消費者保護といった概念以前の問題であり、自らの利益のために「誇り」と「魂」を売った浅ましい餓鬼の姿しか思い浮かべることは出来ません。「食の崩壊」が叫ばれて久しいですが、その言葉は食べる側の現象を示すに止まらず、作る側の様態にまで進行してしまったとの感は否めません。食品を作り、提供する側の原点を改めて確認する時期が来ていることを痛感します。

さて、農業を取り巻く環境に目を転じるとオーストラリアとのEPA(経済連携協定)交渉をはじめ、とうもろこしのバイオエタノールへの転換による穀物飼料の高騰、原油高による生産・流通コストの上昇などの外圧は、かつてない程に日本農業の危機を招いています。それに対応すべき国内施策は、生産性向上のための農地制度の改革も、労働者確保のための外国人研修制度の見直しも、遅々として進んでいないのが現状です。

羅針盤のない船が荒海に翻弄されているかのようであります。農政の賢明な舵取りへの期待を抱きつつも、それを待てず、現実の危機に直面しているのが多くの農業者の実状です。

ただし、その危機に翻弄されて進むべき進路を見失い衰退の道を歩むか、それをバネとして進化の道を歩むかは、経営者自身の資質と決意に大きく左右されるものだと考えます。置かれた環境に悲観することなく、また楽観することもなく、危機を危機として感知し、冷静にその要因を分析して克服していく深い決意があれば必ず道が開けるものと確信します。その決意から知恵が生まれ、戦略が構築され、戦う意欲が生まれてくるものだと思います。

例え成功がすぐ手に入らなくとも、失敗の原因や不適合部分を再度冷静に分析することによって、再挑戦するサイクルが生まれてくるものだと思います。それが、「適正農業規範」の経営への導入によってもたらされる本来の成果だと考えています。

危機に対して選択する道(答え)は決してひとつではないでしょう。それぞれの生産者が持つ経営資源と個性(過去の体験によって形成される部分が大きいですが)によって多様化するものだと思います。コスト競争力で勝負するのもよいし、品質で勝負するのもよいでしょう。途中で大きな修正が必要になることもあるかもしれません。大事なことは挑戦の意欲を失わないことです。

挑戦の意欲を持った人はいつまでも若さを感じます。何より一緒に居て楽しい。

マルタの生産者は有機農業に対しても、さらなる食味の向上に対しても常に挑戦を忘れなかったからこそ、幾多の危機的状況に遭遇しながらも生き残り、評価されてきたのだと感じています。そして、そこには例え地域が離れていても、いつも共に挑戦する同志がいたことも忘れることは出来ません。

新年を迎え、事業本部も皆さんの進化への挑戦を全力で支援していく決意を新たにするとともに、新しい年が皆さまにとって幸せに満ちた年となりますよう祈念いたします。

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